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神谷浩史が語る「暦に違和感を感じたら正解です」

劇場アニメ『傷物語』3部作の中編にあたる、2作目『Ⅱ熱血篇』が8月19日に公開。rooVeRでは主人公の阿良々木暦役を務める神谷浩史さんにインタビューを敢行。全2回に分けてその模様をお伝えします。

傷物語〈Ⅱ熱血篇〉本予告(8/19全国ロードショー) - YouTube

傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 8/19全国ロードショー
原作は西尾維新先生が2006年より刊行を続けている怪異小説『〈物語〉シリーズ』。2009年、『化物語』の放送を皮切りにスタートしたTVアニメシリーズは、 Blu-ray、DVD全27タイトルが累計出荷枚数200万枚を突破するほどの人気となっています。

劇場作品として公開される『傷物語』全3部作は、この〈物語〉シリーズの「原点」ともいえるエピソード。今年1月に公開され、興行収入が8億円を突破した『Ⅰ鉄血篇』に続く、この『Ⅱ熱血篇』では、吸血鬼となった主人公・阿良々木暦を待つ、過酷な試練が描かれます。

今回は、そんな『熱血篇』の魅力を主人公・阿良々木暦を演じる神谷浩史さんに直撃。ドラマツルギーから始まる吸血鬼ハンター3人との壮絶なる死闘、そして羽川翼との甘酸っぱい青春など、本作の見どころを全2回に分けてたっぷりとお伝えします!

【インタビュー前編】 神谷浩史が語る「今回の傷物語は羽川翼を好きになる」
https://www.roover.jp/articles/yiUUD

神谷浩史さんプロフィール

1975年、千葉県出身。1994年にデビュー以降、アニメを中心に数々の作品に出演。2012年から今年にかけて、”声優アワード”に5年連続受賞していることから殿堂入りを果たすなど、日本有数の声優のひとり。代表作に『〈物語〉シリーズ』の阿良々木暦、『さよなら絶望先生』の糸色望、『夏目友人帳』の夏目貴志など。8月24日には6thミニアルバム『Theater』が発売。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19840)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

暦というキャラクターだけは自分に近いものを感じる

──色々なキャラクターを演じておられる神谷さんですが、再び阿良々木暦を演じるときにスイッチみたいなものはありますか?

神谷浩史(以下、神谷):具体的にはないと思うんです。というのも、阿良々木暦という人物に対しての理解度が他のキャラクターに比べて高いということもありますが、暦のファーストインプレッションが他のキャラクターと比べても全然違っていましたので。

どんな作品を読んでいてもそうですが、そのキャラクターたちが自分の声でしゃべることが想像つかないんです。例えば『さよなら絶望先生』の糸色望とかはまさに典型的で、本当に第一話で「死んだらどーする」って言うまでは、ホントにこの人がどんな声でどんなリズムでどんな風にしゃべるのか、原作いっぱい読み込んでも分からないままでしたから(笑)。

でも阿良々木暦だけは、リズムもテンポも音の感じもすべて、僕の声帯でしゃべっておかしくないキャラクターかもしれない、ってとても想像しやすかったんです。最初から「このキャラクターだけは自分に近いものを感じる」って思いで出会っているのは暦だけ。だからあえて阿良々木暦をやるにあたってスイッチを入れなきゃいけないっていうのは意識したことはないと思います。でもこの質問によって意識するようになるかもしれないですけど(笑)。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19682)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

アニメ化から7年分の理解が加わった暦を演じられる

──すみません(笑)。神谷さんは阿良々木暦というキャラクターに7年に渡って関わっていらっしゃいますが、この7年間に暦の印象や認識はどのように変わってきたのでしょうか。

神谷:もはや緩やかに変化していったものですし、まだ渦中にいるので、正確にそれをお伝えできるかどうかは難しいところですけれど、やっぱり最初に読んだ時の印象は、誰かと会話してるところが想像つかないような、コミュニケーションを取ることに前向きじゃない少年という印象が非常に強かったんですよ。だから今回の『傷物語』というのはエピソードゼロにあたる部分なので、それを強めに表現している部分が前作の『Ⅰ鉄血篇』ではあったんだと思うんですよね。

そこから考えてみると、7年間のシリーズを経て、ありとあらゆるヒロインとわりと正しくコミュニケーションを取れている姿が想像できてしまう今となっては、『傷物語』の暦は逆に新鮮に感じるかもしれないなと思います。僕の中では暦に対して7年分の理解が加わっているので、自分なりに最初の暦像を正しく理解してお届けしているつもりなんですけど、それが今、みなさんがTVシリーズでご覧いただいてきた暦像を当てはめてみた時に、もし違和感を感じるって思ってくれたら、むしろ正解なのかなという気がしますね。

今だからできる、より良い作品をお届けしたい

──もう一度リセットされた暦を演じる作業は大変でしたか?

神谷:TVアニメシリーズが始まったのは2009年だったことを考えると、肉体的にも歳を取っているわけですから、当時と今でやってたことの違いは微妙にあると思うんですけどね。ただ、当時よりは7年分の蓄積を重ねたうえで表現できる部分もあると思うので。自分の中で正しくイメージしながら音で表現していくことは難しいけど、非常に楽しい作業だと思います。

それにこの7年間が無駄ではないところもいっぱいありますしね。『傷物語』が発売された当時に語っていた内容の裏付けみたいなものが、巻を重ねていくうちに肉付けされているのが当然あるので。

例えば『傷物語』で暦が言っている「友達はいらない、人間強度が下がるから」っていうセリフの裏付けみたいなものが、去年演じた『終物語』で描かれていたりしますからね。それを知った上でその言葉を口にするのと、知らなくて想像で口にするのでは、僕の中でも扱い方が変わってきます。『傷物語』は当初2012年に公開予定でしたけど、もし予定通り公開できていたとしたら、その時はその時で一番いいものができていると思いますけど、今の方がより良いものができている気がします。

僕の中で『猫物語(黒)』は特別なエピソード

傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19684)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉
──今まで演じて来られた作品を観返すことは?

神谷:うーん、あんまりないんですけど、でも『化物語』とかは再放送が掛かることが多いじゃないですか。だからたまにテレビをつけるとやってたりとかしていて、ふと観続けちゃうことのはありますね。

ただ、こういうのって自分の中でとっても美化されている部分もあると思うんです。冷静な目で見たら実はそんなに良くなかったって言うことも当然あって(笑)。それでも『猫物語(黒)』とかは、すごく自分の中で研ぎ澄まされた何かで出来ている気がする。というのも、『〈物語〉シリーズ』の中で西尾維新先生が一番繊細に扱われている羽川翼との関係性を描いている物語なので、暦にとっても重要なエピソードになっている気がするんです。だから僕の中でも猛烈に美化されていると思う。

そんな訳で『猫物語(黒)』をもう一回ちゃんと観たいと思うんですけど、ちょっと観るのが怖いんですよ(笑)。実はそんなに良くないんじゃないかなって。でも“心渡(怪異殺しの妖刀)”を肩にかけた暦が「下着姿の猫耳女子高生に欲情してるだけなんだよ」って言うシーンの、あそこの絵の雰囲気とあの目の鋭さと、あの暦のビジュアルというのは強烈に残っている。西尾先生によれば、セリフ自体は「コイツ何言ってるんだ馬鹿じゃね?」っていう内容を言わせているけれど、それをいかにカッコよく見せるか、カッコよく聞かせるかっていうところで構成されたそうです。だからもしかしたらね、『傷物語』が全部完結した暁には、続けて『猫物語(黒)』からシリーズをもう一回観られたらいいなあとは思ってます。

とにかく「絶対勝てない」から始まったバトルシーン

傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19689)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉
──今回の『Ⅱ熱血篇』は、ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターとのバトルも見どころのひとつになっていますが、彼らの印象はいかがでしたか?

神谷:そうですね。絶対勝てない、まったく歯が立たないだろうなと(笑)。やっぱり無敵の吸血鬼の力を得たとはいえ、暦は精神的には人間のメンタルですから、肉体的に恐ろしい力を持っていたとしても、どうやって扱っていいものか全く分かっていないと思うんです。自分の肉体とイメージが乖離しすぎているんですよね。そんな精神状態の中で、そういった常識を軽々と飛び越えてくる存在と対峙しなければいけない。まったく勝ち目がないだろうっていう絶望から始まるんですよね、どれも。

でも一方で、キスショットと結んだ約束から、絶対的に勝たなきゃいけないというモチベーションがあるので、その状況が彼を先へと突き動かしていく。原作を知っている方は結果もご存知だと思うんですけど、それでも多分、今回の映像をご覧になる方は、「これは勝てないかも」って思っていただけると思います。それが3バトルありますから、もう本当に疲れますよ(笑)。

バトルシーンは2日に分けて録ったんですけど、まず1戦目の江原(正士)さん演じるドラマツルギーから「これは倒せねえな」と思いながらやってましたからね(笑)。それぞれお三方(江原正士さん、入野自由さん、大塚芳忠さん)とも、ホントに全力でバトルをさせていただきました。あ、ちなみに僕はギロチンカッターが好きです。芳忠さんが一人称「ボク」っていうのがたまんないです(笑)。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19687)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

羽川とのシーンから先に録りたかったです(笑)

──共演者の方々はどんなやり取りを?

神谷:江原さんとかは、「そっちがそれくらいやったら俺もやりたくなっちゃうよな」なんてことを言ってましたね。僕のほうが猛烈に絵が動いているところで全力で演技するアプローチだったので、逆に暦と戦っているみなさんはフラストレーションが溜まったと思います(笑)。いやもう充分に強いので要所で入れていただけたらそれでいいです、みたいな。「全然もっとやれる」って言う江原さんに、スタッフが「そこは抑えてください」って止めているのが印象的でした(笑)。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19688)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉
──すごく大変だった様子が伝わってくるようです(笑)。

神谷:そうですね。しかも2戦したあとに、羽川のシーンがあったんですけど、それはそれで相当疲れましたね(笑)。なんでこの順番だったんだろう…。
──逆のほうがよかったですか?

神谷:逆のほうがよかった(笑)。羽川のシーンをやってから戦いたかったんですけど、必ず相手の方と掛け合いで収録するというルールがあったので。さんざん声を振り絞ったあとにロマンチックのシーンがやってくるという。
──かなり壮絶なバトルシーンなので、暦は激痛を上げるシーンが何度もありました。

神谷:大変だけどやりがいはあるんですよ。絵がちゃんとお芝居で魅せてくれているので、どこに、どれぐらいのダメージを受けているのか、絵から情報を得ることができるんです。
上を向いているのか下を向ているのかでも音が違うので、そこまで細かくやれるし、階段を降りてるリズムで息の弾ませ方も変わってきたりとか、走るスピードで呼吸の早さも変わってきたりするので、ひとつずつこだわってやれました。元々、そういうのが好きなんですよね、僕自身が。丁寧に絵を全部チェックして、できるかぎり再現しようって意気込みでアフレコに参加しましたね。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19692)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

3部作ラスト『Ⅲ冷血篇』に期待するところは?

──今作が終われば、残すはラスト『Ⅲ冷血篇』のみとなります。少し気が早いですが、どんな部分に期待したいと思いますか?

神谷:実は『Ⅲ冷血篇』の絵コンテをすでに拝見しているんです。尾石(達也)監督がお一人ですべてのシーンを起こされたものですよ? 普通、よっぽどのことが無い限り、ひとりで作品全話のコンテを描くということはしないんですよ。今はパートに分けて担当する分業制が主流なので。

だからコンテを見た時に「うわあ、これはすげーな」って、エネルギーからビシビシと伝わってくるんですよね。だからこの作品をを表現しなきゃいけないのかって戦々恐々とした部分があるんです。

でもこれが本当にすべて尾石監督が魅せたい画、新房(昭之)総監督がそれを全部監修して世の中に出た暁には、本当にものすごい3部作に仕上がると思うので、僕もそこまでたどり着ければ、確かに言い残すことはないって思えるかもしれないって期待はあります。本来だったら2012年に公開しなきゃいけないところを2016年まで引っ張って見せたかった“何か”がものすごい詰まっているので。ご覧いただいたみなさんの期待は絶対に裏切らないと思います。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19690)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

どんなバッドエンドにたどり着くか、期待してください

──今から気が引きしまる思いですね。

神谷:そうですね、本当にそこまでたどり着きたいなっていう意気込みはあります。ただ『傷物語』自体が、基本的には悲劇の物語、バッドエンドの物語なので、どんなバッドにたどり着くのかっていうのは、みなさんの中で期待しておいていただけたら。ぜひだまされたと思って、…だましている気持ちは全然ないんですけど(笑)、劇場に足を運んでくれたら本当に嬉しいです。
傷物語〈Ⅱ熱血篇〉 (19667)

via 傷物語〈Ⅱ熱血篇〉

『傷物語〈Ⅱ熱血篇〉』 8月19日全国ロードショー

あらすじ

高校二年の春休みに、美しき吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと出会った阿良々木暦。四肢を失い、瀕死の状態にあった彼女を助けた暦は、しかし自らも吸血鬼になってしまう。人間に戻るためには、奪われたキスショットの四肢を取り戻さなければならない。怪異の専門家・忍野メメの助言を受けた暦は、過酷な戦いに乗り出していくことになる。
彼の前に待ち受けているのは、身長2メートルを超える巨漢である吸血鬼を狩る吸血鬼・ドラマツルギーと、巨大な十字架を自在に操る半吸血鬼(ヴァンパイア・ハーフ)のエピソード。そして、吸血鬼退治を専門にする、物静かな人間・ギロチンカッター。はたして暦は、3人の「敵」から、キスショットの四肢を奪い返すことができるのか? 雨がそぼ降る3月最後の夜、血戦の幕が静かに上がる──。

スタッフ

原作:西尾維新「傷物語」(講談社BOX)
総監督:新房昭之 監督:尾石達也 キャラクターデザイン:渡辺明夫、守岡英行
音響監督:鶴岡陽太 音楽:神前 暁  アニメーション制作:シャフト
製作:アニプレックス、講談社、シャフト
配給:東宝映像事業部

キャスト

阿良々木暦:神谷浩史
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾
羽川翼:堀江由衣
忍野メメ:櫻井孝宏
エピソード:入野自由
ドラマツルギー:江原正士
ギロチンカッター:大塚芳忠

http://www.kizumonogatari-movie.com/

(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
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コマツ
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