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美樹本晴彦インタビュー『甲鉄城のカバネリ』【中編】──無名や菖蒲のモチーフはあの漫画のキャラクターだった!

現在、フジテレビの「ノイタミナ」で人気放送中のアニメ『甲鉄城のカバネリ』。美しいグラフィックでも話題を集める注目作のキャラクター原案を務めた美樹本晴彦さんに、主人公・生駒やヒロイン・無名や菖蒲などのキャラクター誕生秘話を聞きました。

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via 甲鉄城のカバネリ
前回に続く、『甲鉄城のカバネリ』キャラクター原案・美樹本晴彦さんのインタビュー中編はキャラクター編! 原案のオファーの際、荒木監督から提示された『カバネリ』のイメージボードには、美樹本さんが過去に手掛けられたイラストが多数あったとか。そんな主人公の生駒やヒロインの無名、菖蒲たちのルーツや、キャラクターの魅力をより引き出すために行われたTVアニメ初のメイクアップアニメーターの導入についてお伺いしました。

『甲鉄城のカバネリ』美樹本晴彦さんインタビュー【前編】──この衝撃は『トップをねらえ!』以来かもしれない

『甲鉄城のカバネリ』美樹本晴彦さんインタビュー【前編】──この衝撃は『トップをねらえ!』以来かもしれない
前回のインタビューはこちら! 前編では『甲鉄城のカバネリ』のオファーを受けるまでの経緯などについて、色々とお伺いしています。

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フジテレビ"ノイタミナ"ほかにて2016年4月より放送! [主題歌] オープニング・テーマ:EGOIST「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」 [スタッフ] 監督:荒木哲郎 シリーズ構成/脚本:大河内一楼 キャラクター原案:美樹本晴彦 アニメーションキャラクターデザイン/総作画監督:江原康...

キャラクターデザインを考えるときに必要な情報とは

──キャラクターデザインを考えるとき、制作側からの具体的なイメージはどの程度必要になりますか?

美樹本晴彦(以下、美樹本):それはケース・バイ・ケースですね。アニメの場合はシナリオを読ませていただいたり、監督からいろいろとイメージを伝えられたり。その方法は監督の方によって様々です。

イラストなどで一番困るのは、最近はさすがに言われなくなりましたけど、「劇場版の『マクロス』の絵でお願いします」っていうパターン。そんなこと今言われたって出来ませんよ…って(笑)。そういった点で言えば、今回もヒロインの無名などは10年くらい前に描いた絵がイメージの指定の中心でした。

でも、印象が大きく違ったのは、大抵の人が知っていてくれるミンメイや未沙ではなく、集めてくださったことだけでも感動ものだったくらいの、マイナーな私の仕事の中でもさらにマイナーなものが中心で(笑)。
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via 甲鉄城のカバネリ

生駒と無名は『BABY BIRTH』、菖蒲は『マクロス7トラッシュ』がモチーフ

──無名(むめい)のサンプルはどの作品のキャラクターだったのでしょうか?

美樹本:講談社のマガジンZで描かせていただいた『BABY BIRTH』という漫画のヒロイン、朧月日出(おぼろづき・ひづる)をイメージしてくださった切り抜きの割合が一番多かったですね。それが今回の無名のイメージの中心になっています。
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1999〜2002年にマガジンZで連載された『BABY BIRTH』(全2巻)。表紙で描かれたキャラクターがヒロインの朧月日出。
──かわいらしさと強さを併せ持った無名の虜になったファンの方も多いと思います。

美樹本:僕の描いた無名は12歳に見えないですよね。あれはキャラクターデザインの江原康之さんの方でかなり補正してくださっていると思います(笑)。12歳くらいの女の子って、ちょうど大人と子供の狭間にあるような年齢で、個人差も激しいじゃないですか。だから、すごい子供っぽい子もいれば、なんかコスプレにしか見えない大人びてる子もいて。ランドセル背負ってたらヤバいだろってくらいに(笑)。だから、その辺は自由かなと思って描きました。
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via 甲鉄城のカバネリ
──主人公の生駒(いこま)や、もうひとりのヒロイン・菖蒲(あやめ)といったキャラクターも、最初の段階からイメージが出来上がっていたのでしょうか?

美樹本:生駒は二転三転しました。当初は、荒木監督があまり主役っぽくない斜に構えた顔つきの主人公を狙っていらして、それに向けて描いてみたのですが、あまり上手くお応えできなくて。最終的にこんな感じっておっしゃっていたのは、無名と同じ『BABY BIRTH』の主人公で、日条拓也(ひじょう・たくや)というキャラクターです。髪型とかは変わるんですけど、こういう表情の雰囲気でいきましょうって。

菖蒲はいくつか参考に出されているサンプルが多かったけど、おそらく『マクロス7トラッシュ』の漫画で描いたヒロインのエニカ・チェリーニが多く挙げられていましたね。それでも最後まで苦戦して、なかなかおっとりした雰囲気にならず、つい強めの表情を描いてしまったりして。最後は江原さんにお世話になったような感じです。
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1994〜2001年に月刊少年エースで連載された『マクロス7トラッシュ』(全8巻)。表紙奥のキャラクターが菖蒲のモチーフになったヒロインのエニカ・チェリーニ。
──情報をつなげて、ひとつのキャラクターを形成されていったのですね。

美樹本:そうですね。その後のイラストのラフなどを考える時も、WITさんに送って意見をもらったりしているのですが、荒木監督から「ポーズはこんなイメージを参考にしてください」と、たくさん送っていただきました。中にはカードゲームで描いた1枚みたいなのもあったりして、これをどこから集めてきたんだろうって(笑)。自分でも覚えていない絵までありますから、本当にビックリしました。
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来栖は今までに描いたことがない新鮮なキャラクター

──『カバネリ』の中で一番お気に入りのキャラクターは?

美樹本:イラストなどで描くのが面白いのは来栖(くるす)ですね。意外と来栖のような涼しい目つきの醤油顔キャラクターって描いていないんですよね。生駒や『マクロス』のキャラクターは、ほとんど皆ソース顔のキャラクターなので。だから、ラフで来栖を一生懸命描いていると、いつの間にかそれがソース顔になっちゃうこともありましたね(笑)。
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キャラクター原案だからこそできる遊び心

──逆に描いていて苦労するキャラクターはありますか?

美樹本:苦労はしていないんですけど、いろいろと振り幅が大きいと感じるのは無名と菖蒲ですね。

生駒もそうですが、アニメであれだけ自分の描いたイラストのテイストを活かしてくださってるじゃないですか。そうすると、すごく嬉しくなる一方で、逆にイラストでは違う絵を描いてみようと思ってしまう。アニメの無名たちと同じようなイラストであれば、むしろ江原さんにお任せした方がそのものなので。自分は自分なりに、オリジナルを描こうって。それがキャラクター原案の特権といってしまってはマズいのだけれど、キャラクターの新しい側面もつくっていかなければと。そして作品を観たり購入してくださる方々にも、そんな変化も含めて楽しんでいただけると嬉しいですよね。

キャラクター原案という仕事の都合、描く量が圧倒的に少ないので、自分自身イラストを描きながら自分なりの無名や菖蒲を探すような気持ちです。だからイラストのときは、無名も菖蒲も生駒も、ちょっと自由に描いてみようって考えています。もちろんWIT STUDIOさんに最終確認いただきながらになりますが、せっかくなので楽しみながら遊んでいきたいと思っています。
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アニメの表現をさらに広げるメイクアップアニメーターの導入

──『甲鉄城のカバネリ』では、美樹本さんの描かれたイラストの空気感を作画の中で表現していくため、メイクアップアニメーターという新しい役職が設けられています。このような試みはオファーの段階からあったのでしょうか?

美樹本:僕があのとき覚えているのは、荒木監督がいつも作品ごとに、必ず画面や絵作りの中に新しい技術や試みを盛り込みたいと考えていて、今回はキャラクターの0.5段影に挑戦するというお話でした。その際に「何か美樹本さんからやりたいことはありますか?」っておっしゃっていただいて。その時、10年以上前に他の仕事で提案して、全然聞き入れてもらえなかったプランを思い出したんです。

僕はイラストを描くとき、よく目の上の黒いフチがあまりシャープになりすぎないよう、ちょっとぼかして重ねているんです。だからダメ元で、荒木さんに「データ化された現代ならアニメでも出来るんじゃないでしょうか」っていう話をさせていただきました。すると、荒木さんも「それは面白そうですね」と実際にやってくださることに。

でも、その程度だと思っていて画面を見たらビックリですよ(笑)。影のぼかしは入っていたり、ブラシがあちこちに入っていたりで、正直ここまでやっていただけるのかと驚きました。
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via 甲鉄城のカバネリ
──正直、劇場で観られるアニメのクオリティだと感じました。

美樹本:本当にそう思いましたね。実を言うと、メイクアップアニメーターっていう仕事を専門でやる方がいらっしゃるお話は後から知ったんです。取材のときに、「メイクアップアニメーターについてどう思いますか?」って質問をされて、「それはどういった作業なんですか?」と。そこで初めて細かい説明をお聞きしました(笑)。

今も1枚1枚、影の指定ではなくて、担当の方がちゃんとイラストと同じようにデータ上でブラシをかけているそうです。その都度イラストに何枚も色を塗るようなものだから、相当な衝撃を受けましたね。
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繊細なタッチで描かれた無名に美樹本さんも感動

──メイクアップされているシーンで特に惹き込まれたカットなどはありますか?

美樹本:特に印象に残っているのは、第1話で眠りについた無名が目を覚ますシーン(ページ最上部)ですね。よくキャラクターデザインの江原さんは僕の絵を繊細とおっしゃってくれるんですけど、僕の原案って結構ずぶずぶと線を無神経に引いてるところがあるんです(笑)。それをすごく神経を使ったやわらかい繊細な線で修正されていて。

実際、線がすごく綺麗で繊細だったりする絵ってアニメでは再現が難しいので、なかなか思い通りにならないことのほうが多いんです。でも、あのカットはかなり良い線に仕上がっていたので、色がついてアニメになったときに感動しました。あと、無名が首に巻いた紐をほどくカットがあったじゃないですか。あれもすごく雰囲気があって素敵ですよね。


※次回、インタビュー後編は美樹本さんのお仕事への想いについてお届けします!
『甲鉄城のカバネリ』美樹本晴彦さんインタビュー【前編】
https://www.roover.jp/articles/JzwUL

『甲鉄城のカバネリ』美樹本晴彦さんインタビュー【後編】
https://www.roover.jp/articles/LdBTP
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via 甲鉄城のカバネリ
TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』
4月7日よりフジテレビ系列で24:55より放送中
Amazonプライム・ビデオにて日本・世界独占配信
日本では毎話フジテレビ放送直後の木曜27:00〜配信中
http://kabaneri.com/

【スタッフ】
監督:荒木哲郎/シリーズ構成・脚本:大河内一楼/キャラクター原案:美樹本晴彦/アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:江原康之/音楽:澤野弘之/助監督:田中洋之/設定統括:笠岡淳平/コンセプトアート・デザイン:森山洋/デザインワークス:形部一平/コンセプトボード:吉田史朗/プロップデザイン:常木志伸/美術デザイン:谷内優穂、曽野由大、青木薫/総作画監督:丸藤広貴、浅野恭司
アクションアニメーター:川野達朗、世良悠子/メインアニメーター:手塚響平/チーフメイクアップアニメーター:松本幸子/美術監督:吉原俊一郎/色彩設計:橋本賢/CGディレクター:籔田修平/撮影監督:山田和弘/編集:肥田文/音響監督:三間雅文/音響効果:倉橋静男(サウンドボックス)/アニメーション制作:WIT STUDIO/制作:カバネリ製作委員会

【キャスト】
生駒:畠中 祐/無名:千本木彩花/菖蒲:内田真礼/来栖:増田俊樹/逞生:梶 裕貴/鰍:沖 佳苗/侑那:伊瀬茉莉也/巣刈:逢坂良太/吉備土:佐藤健輔/美馬:宮野真守

(C)カバネリ製作委員会
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コマツ
コマツ

KADOKAWAのエンタメ系情報誌で編集者を経て、フリーに転向。 得意分野は漫画を中心に、映画やアニメなどインドアエンタメが中心です。

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