ChatHead

美樹本晴彦インタビュー『甲鉄城のカバネリ』【前編】──この衝撃は『トップをねらえ!』以来かもしれない | rooVeR [ルーバー]

このエントリーをはてなブックマークに追加
11

美樹本晴彦インタビュー『甲鉄城のカバネリ』【前編】──この衝撃は『トップをねらえ!』以来かもしれない

現在、フジテレビの”ノイタミナ”で人気放送中のアニメ『甲鉄城のカバネリ』。美しいグラフィックでも話題を集める注目作のキャラクター原案を務めた美樹本晴彦さんに、主人公・生駒やヒロイン・無名や菖蒲などのキャラクター誕生秘話を聞きました。

甲鉄城のカバネリ (2211)

via 甲鉄城のカバネリ
豊作と呼び声高い2016年の春アニメ。すでにストーリー終盤へと差し掛かっている作品も多いなか、注目を集めているのがフジテレビの「ノイタミナ」で放送中の『甲鉄城のカバネリ』です。

『進撃の巨人』を手掛けた荒木哲郎監督がアニメーション制作会社のWIT STUDIOと再タッグ。さらにシリーズ構成・脚本に『コードギアス』の大河内一楼さん、音楽に『機動戦士ガンダムUC』の澤野弘之さんなど実力派スタッフが参加し、不死の怪物”カバネ”の脅威にさらされた日ノ本を舞台に人類の生存を懸けた死闘を描いています。
甲鉄城のカバネリ (2248)

via 甲鉄城のカバネリ
和風スチームパンク的な世界観やカバネとの緊迫感あふれるアクションも魅力ですが、最も話題となっているのは、生駒や無名、菖蒲といった、美しい作画で魅せるキャラクターたち。キャラクターの原案を務めたのは『マクロス』シリーズや『トップをねらえ!』、『メガゾーン23』など数々の人気キャラを生み出してきた美樹本晴彦さん。

今回、rooVeRでは美樹本さんに直撃インタビューを敢行しました。オファーがあった経緯から無名たちの誕生秘話、キャラクターを描くポイントまでみっちり前編・中編・後編の3回に分けてお送りします!
【Profile】 美樹本晴彦(みきもと・はるひこ)

東京都出身8月28日生まれ。1980年、「スタジオぬえ」のオリジナル企画に参加。「アートランド」にアルバイトとして入社。以後、アニメーター、イラストレーターとしての道へと進む。
その後、「超時空要塞マクロス」をはじめ「メガゾーン23」「トップをねらえ!」などの人気作・話題作のキャラクターデザインを数多く担当。それまでのアニメ作品とは一線を画した、斬新で洗練されたキャラクター造形で脚光を浴び、トップクリエイターとして、圧倒的な支持を受ける。
現在は、イラスト、漫画連載、ゲームキャラクターデザインと幅広く活躍している。

美樹本晴彦公式サイト
http://www.mikimotoharuhiko.com/

「甲鉄城のカバネリ」PV第一弾_2015.12.17解禁 - YouTube

フジテレビ"ノイタミナ"ほかにて2016年4月より放送! [スタッフ] 監督:荒木哲郎 シリーズ構成/脚本:大河内一楼 キャラクター原案:美樹本晴彦 アニメーションキャラクターデザイン/総作画監督:江原康之 音楽:澤野弘之 脚本:瀬古浩司 助監督:田中洋之 設定統括:笠岡淳平 仮想世界調整:三輪清宗 コンセプトア...

美樹本さんご自身も驚いた『カバネリ』の作画クオリティ

──すでにネットなどでも多くの反響がありますが、現在放送中の『甲鉄城のカバネリ』をご覧になっていかがですか?

美樹本晴彦さん(以下、美樹本):毎回、イチ視聴者としてテレビの前でドキドキしながら楽しく観ています。僕がシナリオを読ませていただいたのは、打ち合わせの前に見せていただいた冒頭の数話だけでしたので、これからどうなるか僕も分からないんですよ(笑)。
甲鉄城のカバネリ (2310)

via 甲鉄城のカバネリ
──実際にキャラクターが動いているところをご覧になった感想は?

美樹本:ビックリしましたね。実は最初、荒木監督からキャラクターを描くにあたって、僕の原案を再現するために考えていることがあるんだっていう話を伺っていて。そのひとつに、通常1段影、2段影と付けていく影を今回は0.5段影でやるプランがあったんです。その時は正直、影があまり暗くならないよう面積の広い影を少し淡くする程度に思っていたんですが、とんでもなかったですよね(笑)。ぼかしも入っていたり、ブラシも入っていたり、ものすごく丹念に仕上げてありました。

だから、ただ線だけでキャラクターの原案に似せるという考え方ではなく、イラストまで含めた僕の絵柄の雰囲気を出すところまでをやっていただいていて。本当にビックリしましたし、大袈裟ではなく感動しました。
甲鉄城のカバネリ (2163)

via 甲鉄城のカバネリ
──『カバネリ』のオファーを受けるまでの経緯をお聞かせください。以前、公式コメントなどで「もうアニメに関わる機会はないかもしれない」とおっしゃっていましたが……。

美樹本:それは特別な決心があったというわけじゃなくて、漠然とそういう風に思っていたんです。理由のひとつは、別の作品でキャラクター原案をやらせていただいたときのことでした。現場では、『カバネリ』のように僕の絵柄を再現してくださる場合もあれば、作画監督さんの個性を前に出して、原案はその素材のひとつとして扱われる場合もあります。それはそれでとっても良いキャラクターが仕上がることもありますし、僕はどちらでも構わないと思っていました。

ただどっち付かずの中途半端な状況になってしまうと、「それはまずいんじゃない?」と思うこともあって。

上手く表現しにくいのですが、線や形を追うという意味ではとてもしっかり描かれているにもかかわらず、何か空気感みたいなものが違う…というか。魅力的に感じられないという感じでしょうか。この違和感はむしろ、自分が描いているものにも理由があるんじゃないのか?今のアニメキャラクターの描き方の中では、自分の絵の方がむしろ異端で、足を引っ張ってしまうんじゃないのか?っていう気がしまして…。

突き詰めた結果、僕がアニメに向いてないんじゃないかって思うようになったんです。そんな頃でしたので、『カバネリ』に声をかけていただいたのは、正直意外で驚きました。
甲鉄城のカバネリ (2167)

via 甲鉄城のカバネリ

アニメでは再現が難しい、美樹本キャラクターが持つ空気感

──現在のアニメのキャラクターと、美樹本さんの描くキャラクターの間に、どのような違いがあったとお考えでしょうか。

美樹本:「違い」という表現は難しいですね。それこそ新旧の違いが一番じゃないかと(笑)。ですから「違い」ではなく、あくまで自分がもっとも気にしながら描いているという意味になりますが、空気感みたいなものでしょうか。

あとは、絵としての手作り感みたいなものかもしれません。実際は着彩はCGを使っていますが、とりわけイラストでは手塗り感みたいなものにはこだわりたいなと。空気感については表現が難しくて、前に対談したことがある作家さんは「情念」なんて表現をされていました。でも、僕の感覚も同じような意味合いだなって。描いている人によって込められた何かが出て来るような絵の方がやっぱり素敵だと思っているんです。

ただやはり、アニメの場合はそれが難しいのかなって。整然と描かれているもので成立するようなキャラクターだったら、僕が参加しても、足を引っ張っちゃうだけかなと思いました。

もうひとつ感じるのは、やはり育った時代の違いでしょうか(笑)。僕なんかはアニメの仕事に参加しつつどこか劣等感みたいなものを抱えていて、なんとかアニメの絵から離れた絵を描きたいと思って描いていたこともあるのですが、今は逆に時代が変わってアニメ調の絵も進歩とともにポップアートとして認知されていたりするわけですから。
甲鉄城のカバネリ (2170)

via 甲鉄城のカバネリ
──そんな中で、美樹本さんが今回『カバネリ』のキャラクター原案を引き受けようと決心した理由は?

美樹本:まず、最初に見せていただいた企画書がものすごい情報量だったことがありました。企画書を拝見するだけで、荒木監督はもちろんのこと、スタッフ皆さんの企画に対する意気込みが強く感じられて、これはすごいなと思いました。逆に、その段階からキャラクターや世界観がかなり出来ていたので、これはあえて僕が入らなくてもいいんじゃないかと思ったくらい(笑)。

そういう状態で荒木監督と会う時間を作っていただいて。お会いして話を聞かされたときに、荒木さんがあまり自分を飾らずに、自分はこういう風にしたいと思ったことをしっかりと分かりやすく話される方で、その部分にまず魅かれました。あまり気取ったことを言わないというか、とてもわかりやすく本音に近い表現をストレートにされるように感じましたので。

もうひとつ決定的だったのは、各キャラクターの注文の際に、コンセプトアート&デザインの森山洋さんが描かれたイメージボードの横に、僕のアニメやイラスト、漫画から切り抜いた絵がたくさんあったんです。このキャラクターはこの絵の雰囲気で、といった資料がかなり大量につけてあって。
甲鉄城のカバネリ (2242)

via 甲鉄城のカバネリ

『トップをねらえ!』でも感じたアニメ制作現場のこだわり

──最初の段階からとても具体的なイメージがすでに制作側にあったわけですね。

美樹本:ちょっと状況は違うし引き合いに出してしまってはお二人に失礼かもしれませんが、『トップをねらえ!』で庵野秀明監督に感じた印象が、今回の状況に近いんじゃないかと思います。

監督がイメージに近い作品の資料を持ってきて、「このキャラはこんな感じで」っていうオーダーの仕方だったんですが、実際にスタジオへ見学に行ったら、キャラクター表だけじゃなくて、漫画やイラストといった、資料のコピーが机のあちこちに貼ってあったりして。ここまでいろいろ集めてくださっていれば、僕としてもそれは嬉しいに決まっています(笑)。しかも『トップをねらえ!』も今回同様作画スタッフがものすごく上手い方々が集まってましたから、そっくり以上に描いてくださるわけです。あの時は本当にビックリしましたね。

今回の『カバネリ』もそういった意味で非常に近いというか、作品や表現に対しての強い熱意みたいなものが感じられたんです。
甲鉄城のカバネリ (2249)

via 甲鉄城のカバネリ
──美樹本さんにお願いしたいという熱意がひしひしと伝わってきたと。

美樹本:企画段階での動きは存じ上げませんが、こちらにお話をいただいた時点ではかなり資料も集めてくださっていて。僕の作品の中から具体的なイメージをしっかりと持っていただいていた感じで。そこは冥利に尽きると言うか、本当に嬉しかったです。

※次回、インタビュー【中編】では無名などキャラクター誕生秘話をお届けします!
『甲鉄城のカバネリ』美樹本晴彦さんインタビュー【中編】
https://www.roover.jp/articles/b4SWl

『甲鉄城のカバネリ』美樹本晴彦さんインタビュー【後編】
https://www.roover.jp/articles/LdBTP
甲鉄城のカバネリ (2164)

via 甲鉄城のカバネリ
TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』
4月7日よりフジテレビ系列で24:55より放送中
Amazonプライム・ビデオにて日本・世界独占配信
日本では毎話フジテレビ放送直後の木曜27:00〜配信中

http://kabaneri.com/

【スタッフ】
監督:荒木哲郎/シリーズ構成・脚本:大河内一楼/キャラクター原案:美樹本晴彦/アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:江原康之/音楽:澤野弘之/助監督:田中洋之/設定統括:笠岡淳平/コンセプトアート・デザイン:森山洋/デザインワークス:形部一平/コンセプトボード:吉田史朗/プロップデザイン:常木志伸/美術デザイン:谷内優穂、曽野由大、青木薫/総作画監督:丸藤広貴、浅野恭司
アクションアニメーター:川野達朗、世良悠子/メインアニメーター:手塚響平/チーフメイクアップアニメーター:松本幸子/美術監督:吉原俊一郎/色彩設計:橋本賢/CGディレクター:籔田修平/撮影監督:山田和弘/編集:肥田文/音響監督:三間雅文/音響効果:倉橋静男(サウンドボックス)/アニメーション制作:WIT STUDIO/制作:カバネリ製作委員会

【キャスト】
生駒:畠中 祐/無名:千本木彩花/菖蒲:内田真礼/来栖:増田俊樹/逞生:梶 裕貴/鰍:沖 佳苗/侑那:伊瀬茉莉也/巣刈:逢坂良太/吉備土:佐藤健輔/美馬:宮野真守


(C)カバネリ製作委員会
このエントリーをはてなブックマークに追加

WRITER

コマツ
コマツ

エンタメ系情報誌で編集者を経て、フリーに転向。得意分野はマンガを中心に、映画やアニメなどインドアエンタメが中心です。

お気に入り登録 >> 他の記事もチェック

RECOMMEND

CATEGORY RANKING

CATEGORY RANKING

RECOMMEND

WRITER