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独り占めの先にいいことはない──元教員のバリスタ吉田恒さんが「私立珈琲小学校」で伝えたいこと | rooVeR [ルーバー]

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独り占めの先にいいことはない──元教員のバリスタ吉田恒さんが「私立珈琲小学校」で伝えたいこと

2016年7月に東京・代官山にオープンした「私立珈琲小学校」。変わった店名が印象的ですが、店主の吉田恒(よしだわたる)さんは、都内の小学校で21年間勤務していた元教員というバリスタとしては意外な経歴をもっています。今回はそんな吉田さんにお話を伺ってきました。

自分の仕事で目の前の人を喜ばせるということ

──早速ですが、吉田さんはなぜ小学校の先生から、バリスタというまったくの異業種に転向したのでしょうか?

「小学校で教員としてクラスを受けもっていた時、いろいろな個性をもった子ども達と楽しく関わってきましたが、あるときふと『子どもは先生を選べないんだよな。』と思ったんですね。

子どもは僕の授業がつまらないと思っても、教師を選ぶことはできないですし、僕の授業を受けなければいけません。その事実に気付いたとき、『自分を選んでくれたお客さんに、自分の仕事で喜ばせて対価を得る。』ということに魅力を感じるようになったんです。」
ヒャクマンボルト (159907)

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──なるほど。その中でも、なぜバリスタという道を選んだのですか?

「僕はもともと食べることや飲むことが好きなのですが、その中でも特にコーヒーは大好物。そのため、以前からバリスタという職業にとても興味がありました。それに、コーヒーはこれからますます裾野が広がりそうな予感がしていたので、チャレンジしたいと思いました。」

過去を否定するのではなく、むしろ武器にする

──教員ではない仕事に魅力を感じて転職を決意されたわけですよね。それなのになぜ、店名に「小学校」と入れたのでしょうか?

「僕もホントはもっと横文字のカッコいい名前を付けたかったんですよ!コーヒー屋さんなのに『小学校』って、ちょっとわかりにくいですよね…(笑)。」
──吉田さんが名付けたわけではないんですか?
ヒャクマンボルト (159908)

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「僕が教員を辞めてバリスタの専門学校に通っていた頃、大好きな中目黒の『マハカラ』という店のオーナーから『池尻にクローズしている店舗があるんだけど、そこでお店やらないか。』と声をかけていただきました。

それで今の前身となる店を出すことになったんですが、私が考えた横文字の店名をオーナーに教えたら『もともと教師だったんだから、「先生のお店に行こう。」とお客さんに親しんでもらえるお店がいいんじゃない?』と言われたんです。

僕としてはそのとき教員だったという過去は見ないようにしていたんです。でも『自分の過去を否定するのではなく、むしろ武器にして勝負するべきだ』、というオーナーの言葉に背中を押され、『私立珈琲小学校』という今の名前になりました。」

いろいろなものに寄り添えるコーヒーの魅力

──お店では「授業」や「クラブ活動」と題して、さまざまな企画を開催していますよね。

「はい。ロースターやバリスタの方によるコーヒーの授業や丁寧な生活を送るための『靴磨き・美化委員活動』など、いろいろなジャンルのスペシャリストを招いて企画を行ってきました。
ヒャクマンボルト (159909)

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蔵前にあるチョコレートファクトリー&カフェ『ダンデライオン』の授業では、チョコレートから社会を学んだり、チョコとコーヒーのマッチングを教えていただいたり、意義深い内容になりました。他にも、書家の國廣沙織さんを招いたときには、海外の方が興味を示してくださり、楽しんでいただきました。」
──おもしろそうな企画ばかりですね!どの企画もコーヒーを飲みながら開催しているんですか?

「どの授業でもクラブ活動でも、もちろんコーヒーを淹れます。コーヒーって、それ自体が主役にならなくても、いろいろなものに寄り添いやすいんですよね。コーヒーがあるだけでリラックスできたり、頑張る人を勇気づけたり。そこがコーヒーの大きな魅力だと思います。」

独り占めの先にいいことはない

──お店のコーヒーのこだわりを教えてください。

「都内の僕の大好きな複数のロースターさんから豆を仕入れさせてもらっています。ロースターさんの顔が見たいし、話も聞きたいので、できる限り、豆を直接取りに行きたいと思っています。取引量が多い時は配送もお願いしますが、料理人が農家に足を運ぶのと一緒ですね。」
ヒャクマンボルト (159910)

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──豆の焙煎からお店でやろうという考えはあったんですか?

「僕にとっては、今使っている豆を選んでいることそのものが、自分のこだわりなんです。大好きなものを仕入れて、その魅力をお客さんに伝えるのが僕の役目。これは教員の時の感覚と似ています。」

──教員の時の感覚と似ているとは、どういうことでしょうか?
ヒャクマンボルト (159911)

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「僕が子どもたちにしたいと思ってきたことは、子どもたちに事実や新しい見方や考え方と出会う場を作ることでした。 この店でも僕が豆や食べ物を紹介することで、その紹介したお店にお客さんが足を運んでくれたら嬉しいです。

自分の大好きなお店も知ってもらえて、小さく経済が回る。それって幸せなことだと思うんです。教員だった頃から『独り占めの先にいいことはない』と強く思っていました。分け合うことでたくさんの人が小さく幸せになる…そんな繋がりが生まれるように、自分にできることを続けていきたいと思います。」
ヒャクマンボルト (159912)

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──間もなくオープンから1年が経つ「私立珈琲小学校」ですが、これからどんなお店にしていきたいですか?

「これまでにコーヒーを通して、また授業やクラブ活動を通して、他のお店とのご縁をいただいたり、お客さん同士が繋がったりと、多くの出会いが生まれる場に、少しずつ近づいているのを感じています。これからも、風通しの良い空間で、小さなやりとりのあるお店を目指していきたいです。

また、このお店は曜日によって店員さんが替わる担任制ということで、今日(水曜日)は『Let It Be Coffee』の2人が店に立っています。この2人もいつかはここを卒業していくと思いますが、そんな卒業生たちがいつでも帰ってこられる母校でいられるように、頑張りたいですね。あと今通ってくれているちっちゃな子や小学生の子達が、大人になっても来てくれるように、細くても長く店を続けていきたいです。」
ヒャクマンボルト (159913)

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取材をさせてもらったのは平日の午後。途中ランドセルを背負った小学生の子どもたちがお店のテラスに集まって、何やら店員さんに悩みを相談し始めました。

近所の小学生かと思ったら、なんとお店の目の前には本物の小学校が!これは偶然だそうですが、運命に導かれてお店を出した…と思わずにはいられません。子どもたちに「おかえり。」と笑顔で手を振る吉田さんは、バリスタではなく、先生の顔に戻っていた気がしました。
【店舗情報】
「私立珈琲小学校」
住所:東京都渋谷区鶯谷町12−6
営業時間:火~木11:00~19:00
金~日11:00~20:00
定休日・月曜日
Facebook:https://www.facebook.com/coffeeelementaryschool/

ライター:下條信吾
撮影:インディ
編集:ヒャクマンボルト
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