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僕らはもう一度ジブリの志を継いで映画を作るんだ。『メアリと魔女の花』米林宏昌監督インタビュー前編 | rooVeR [ルーバー]

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僕らはもう一度ジブリの志を継いで映画を作るんだ。『メアリと魔女の花』米林宏昌監督インタビュー前編

7月8日より公開中の劇場アニメ『メアリと魔女の花』。『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を手掛けたスタジオジブリの米林宏昌監督が、同社を離れて描いた初の長編作品となります。作品の魅力はどこにあるのか、どのような思いで作ったのか。全2回にわたるインタビュー前編では、スタジオ解散から新天地の設立までのお話を伺いしました。

「メアリと魔女の花」予告3 - YouTube

公開日:2017年7月8日(土)全国ロードショー 公式サイト:http://www.maryflower.jp (C)「メアリと魔女の花」製作委員会 杉咲 花 神木隆之介/天海祐希 小日向文世/満島ひかり 佐藤二朗 遠藤憲一 渡辺えり/大竹しのぶ 原作/メアリー・スチュアート(KADOKAWA刊) 脚本/坂口理子...
いよいよ7月8日より公開がスタートした『メアリと魔女の花』。

本作は2014年に『思い出のマーニー』を発表後、スタジオジブリ制作部門の解散によって同社を離れた米林宏昌監督が、およそ3年ぶりに手掛けたアニメーション映画です。公開初週では興行収入4億2800万円を記録(興行通信社調べ)と、前作『思い出のマーニー』を超える好調なすべり出しとなりました。

2017年夏の映画は『メアリと魔女の花』が大本命!手掛けたのはジブリ出身の次世代クリエーター | rooVeR [ルーバー]

2017年夏の映画は『メアリと魔女の花』が大本命!手掛けたのはジブリ出身の次世代クリエーター | rooVeR [ルーバー]
ジブリっぽいのにジブリじゃない。次のアニメ業界を背負って立つ期待で注目が高まる米林宏昌監督×スタジオポノック制作の映画『メアリと魔女の花』が今夏上映。いったいどんな作品なのか、ストーリーやスタッフ、キャストなどなど、現在公開済みの情報をまとめご紹介します。

『メアリと魔女の花』はジブリアニメか否か

©2017「メアリと魔女の花」製作委員会 (175687)

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
『メアリと魔女の花』の語るうえで、どうしても避けては通れないのが「本作とスタジオジブリの関係」について。実際にネットやSNSなどを見ていても、「ジブリ作品だと思って観てた」という声が散見されます。
それもそのはず、『メアリと魔女の花』は米林監督をはじめ、脚本の坂口理子さん(『かぐや姫の物語』)、音楽の村松崇継さん(『思い出のマーニー』)、作画監督の稲松武志さんや作画監督補の山下明彦さん(『ハウルの動く城』ほか)といった、これまでのスタジオジブリ作品を生み出してきたスタッフが集結。さらに本作は、ジブリを退社した西村義明プロデューサーが立ち上げたアニメーション制作会社「スタジオポノック」の初長編アニメーション映画でもあります。
スタジオポノックでの『メアリと魔女の花』制作風景

スタジオポノックでの『メアリと魔女の花』制作風景

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
rooVeRでは、そんな『メアリと魔女の花』を手掛けた米林宏昌監督にインタビュー。スタジオ解散から完成までの道のり、劇中の演出について単刀直入に直撃しました。

結論から言うと、「ジブリの志を受け継いでいるけど、まったく新しい作品」として楽しめる『メアリと魔女の花』。全2回に分けてお送りするインタビュー前編では、スタジオジブリの制作部門解散から作品づくりがスタートするまでをお届けします!

インタビューの前に、映画のストーリーをおさらい

原作はイギリスの児童文学作家メアリー・スチュアートの『The Little Broomstick(小さな魔法のほうき)』。 米林監督にとって、『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』に続く3作目の英国文学であり、師である宮崎駿監督がかつて選んだ題材でもある「魔女」を描いた作品です。
©2017「メアリと魔女の花」製作委員会 (175689)

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
イギリスの片田舎にある”赤い館村”へと引っ越してきたメアリですが、のどかすぎる生活にやや退屈気味……。そんなある日、2匹の猫に導かれたメアリは森の中で不思議な花《夜間飛行》を見つけます。それはかつて、ある者が魔女の国から盗み出した禁断の”魔女の花”でした。
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via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
《夜間飛行》の実によって、一夜限りの強大な魔女の力を得たメアリは、魔法使いたちの最高学府「エンドア大学」へと招かれ、校長のマダム・マンブルチュークや魔法科学者のドクター・デイと出会います。メアリの力に賛辞を贈る魔法使いたちを見て、つい調子に乗ってしまった彼女は、ある嘘をついたことで後に事件を引き起こすことに……。

米林宏昌 監督プロフィール

rooVeR (175857)

via rooVeR
よねばやし・ひろまさ 1973年、石川県生まれ。1996年にスタジオジブリに入社し、『もののけ姫』('97年)『千と千尋の神隠し』(’01年)など数々の作品にアニメーターとして参加。2010年公開の映画『借りぐらしのアリエッティ』で長編初監督に大抜擢され興行収入92.5億円の大健闘、続く監督作『思い出のマーニー』(’14年)はアカデミー賞長編アニメーション映画部門にノミネートされました。本作は監督として3作目の長編作品となります。

たくさんの人たちの才能が混ざりあった作品に

――『メアリと魔女の花』は、米林監督にとって3回目の長編監督作品となりますが、実際に作り終えた今のお気持ちはいかがですか?

米林宏昌(以下、米林):本当に、進行が遅れに遅れていた作品だったので、まずは無事に完成してお客さんに届けることができたことが嬉しかったですね。スタジオジブリを離れて新たに設立したスタジオポノックで、第1回目の長編作品ということもあって、苦労したことはいっぱいありました。
『メアリと魔女の花』制作中の米林宏昌監督

『メアリと魔女の花』制作中の米林宏昌監督

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
――スタジオジブリを離れてゼロからのスタートという形になりましたが、米林さんご自身の心境も、ジブリ在籍中と比べて大きく違いがあったのでは。

米林:スタジオジブリは、スタートの時点から宮崎監督のために集まった優秀なスタッフたちがすでにいる状態で、制作が始まりますからね。そういう意味では最初から最高の環境が整っているわけです。

でも、今回のスタジオポノックはスタッフを集めるところから始めなければいけない。その時点ですでに大きく違っていたので本当に大変でしたね。
エンドア大学のほうき小屋の番人・フラナガン。声の出演は...

エンドア大学のほうき小屋の番人・フラナガン。声の出演は佐藤二朗さん。

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
でも、先ほどゼロからのスタートとおっしゃいましたけど、僕自身はゼロからではないなぁと思っているんですよ。スタジオジブリで学んできた技術や考え方は、僕たちの中にしっかりと刻まれています。そういったベースが作品のクオリティに影響を与えている。

今回の作品は、スタジオジブリの頃から共にやってきた仲間たちに多数参加いただきました。一方で、ジブリでは出会えなかったであろう新しい才能や考え方を持った方々ともご一緒できました。『メアリと魔女の花』は、そういったたくさんの人たちの才能が混ざりあったような作品が出来上がったと感じています。

「作る」ということをまず決めた

――新しい作品を作るという話が持ち上がった時、すでに新スタジオを立ち上げるという構想は念頭にあったのでしょうか?

米林:最初に西村(義明)プロデューサーから話があったのは、2014年に『思い出のマーニー』を作り終えてまもなくの頃でした。

『マーニー』を作っている最中から、制作部門が解散するということは聞いていたので、次を作るのであればスタジオジブリではない別の場所で作らなければならないとは思ってました。ただ、そのために自分たちで会社を作るのか、あるいはどこか別の会社に身を寄せるのかまでは全然決まっていなかった状態です。

とはいえ、いったん「作る」と決めてしまえば、そのためにどうすればいいか決めていくことができます。だから、とりあえず「やりたい」という意思をプロデューサーに伝えたんです。
©2017「メアリと魔女の花」製作委員会 (175704)

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
――とにかく次の作品を作りたいと。

米林:それからですね、西村プロデューサーと次回作のための原作を探しめたのは。具体的な作品はともかく、少女たちの心の中を描いていった『マーニー』とは真逆に、キャラクターたちをどんどん動かしたファンタジーを作りたいねっていう話を最初にしてました。

それと同時に、ジブリ在籍中からお世話になっている人たちやスタッフたちに、「今度映画を作ろうと思ってるんです、まだ何もないですけど」と声をかけていったんです。
――ずいぶんと草の根的な活動ですね(笑)。

米林:本当にそうだったんですよ。当初は西村プロデューサーと2人だけで、図書館で作品のテーマを探したり、喫茶店を巡ったりしながら脚本を練っていましたから(笑)。途中から坂口(理子)さんが脚本に加わりましたけど、当時はまだ会社も建物もなかった。そういうところからスタートしてきたので、こうして出来上がったことがすごく感慨深いんです。
『メアリと魔女の花』制作中の米林宏昌監督

『メアリと魔女の花』制作中の米林宏昌監督

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
――それが2014年に『思い出のマーニー』が公開した後の出来事と。

米林:実際に『メアリと魔女の花』の脚本にたどり着いたのは、2015年が明けてからですね。スタジオジブリの制作部門が解散する2014年の暮れまでは、いろんな人に会ったり、脚本を進めたりしてて。

『メアリと魔女の花』にたどり着くまでの間にも、別の企画を考えては潰れていたりしていた時期がありました。だから、「これで行きます」っていうベースが決まったのは、年が明けてからのことです。
――別のスタジオと手を組んで作るということは考えてなかったのですか?

米林:それも念頭にはありましたが、僕たちが本当に作りたいものは全然違うのではないか、と。

――もしほかの制作会社と組んでいたら、全く違う雰囲気の作品が出来上がりそうですね。

米林:そうですね。西村プロデューサーからも「自分たちの中に作りたいものがあるんだったら、それは会社を作るところからスタートしたほうがいいんじゃないか」という提案がありました。それでスタジオポノックという会社を立ち上げるという、ゼロから作っていくことを選択したんです。
赤い館村に暮らすティヴ(黒猫)とギブ(灰猫)

赤い館村に暮らすティヴ(黒猫)とギブ(灰猫)

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
――先ほどおっしゃった「自分たちの作りたいもの」とは、「スタジオジブリ作品を継承したもの」を示すと?

米林:「スタジオジブリの志を持った作品を作っていく」ことへの使命感は、西村プロデューサーが強く考えていたことだと思います。僕もその考えに同意していました。

でも今回、作品を作りながら感じたのは、一緒にやってきたスタッフそれぞれの中に「スタジオジブリ」というものがある、というものだった。

『メアリと魔女の花』には、作画監督をやって下さった稲村武志さんや山下明彦さんをはじめ、スタジオジブリで作品を支えてくれた人たちが数多く参加してくれています。そういった人たちの絵の中に、スタジオジブリの考え方が入っていて、僕はその力を借りながらひとつ作ることができた。これが全然違うスタッフでやると全然違うものになっただろうなと思いますね。

スタジオジブリで学んだことは大きな魔法

メアリの大叔母・シャーロット。声の出演は大竹しのぶさん。

メアリの大叔母・シャーロット。声の出演は大竹しのぶさん。

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
――『メアリと魔女の花』を作ったことで、大きな発見があったわけですね。

米林:スタジオジブリで学んだことは、やはり大きな魔法だったんだなって思います。そういう意味で『メアリと魔女の花』は自分たちの境遇にも置き換えて描けた作品であり、新たな一歩をこれから歩みださなきゃいけない、と考えさせられる作品でもありますね。
――ちなみに、結局のところ宮崎監督はご覧になったんですか?(7月初旬に取材)

米林:観ていないですね。というか、観るかどうかもわかりません。
メアリが暮らす赤い館の庭師・ゼベディ。声の出演は遠藤憲...

メアリが暮らす赤い館の庭師・ゼベディ。声の出演は遠藤憲一さん。

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会
――(笑)。本作を制作中に宮崎監督からアドバイスがあったという話を伺いましたが。

米林:そうですね。「(制作進行が)遅れたときにどうしたらいいか」っていう具体的なアドバイスをいただきました(笑)。

――相談されたんですね。

米林:一度だけポノックにいらしたことがあったんですよ。メロンパンを差し入れに激励に来てくださったんですけど、そこでスタジオの窮状をご覧になって心配して下さったんだと思います。

――メロンパンを持って激励というアプローチもなんだか独特ですね。

米林:本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

スタジオジブリのDNAはさらなる進化へ

スタジオジブリ制作部門の解散というニュースは私たちも衝撃的でしたが、実際に働いていたスタッフたちにとっては、言い表せないほど大きなショックだったのだろうと思います。そんな中で、新たなスタジオを立ち上げ、スタジオジブリの意思を受け継いでいくという決意をした米林監督と西村プロデューサー。その想いに胸が熱くなります。

そんな2人の思いが詰まった、スタジオポノック第1作目となる『メアリと魔女の花』。その見どころや演出へのこだわりは、明日の夕方更新予定の「インタビュー後編」でじっくりとご紹介しますので、こちらもぜひお楽しみに!
©2017「メアリと魔女の花」製作委員会 (175644)

via ©2017「メアリと魔女の花」製作委員会

映画『メアリと魔女の花』 2017年7月8日(土)より全国公開中

出演:杉咲花、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、遠藤憲一、渡辺えり、大竹しのぶ
原作:メアリー・スチュアート(KADOKAWA刊)
脚本:坂口理子
脚本・監督:米林宏昌
音楽:松村崇継
プロデューサー:西村義明
制作:スタジオポノック
製作:「メアリと魔女の花」製作委員会

©2017「メアリと魔女の花」製作委員会

『メアリと魔女の花』公式サイト

『メアリと魔女の花』公式サイト
「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の米林宏昌監督全世界待望の最新作、大ヒット上映中!
TEXT=M.サイトー
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